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戦後と現代をつなげるさまざまな事実・事件と社会運動史的分析を探求。

2014年10月15日 UP

ようこそ“知っておきたい「現代政治・戦後史」”ページへ

あなたは「ベトコン」を知っていますか? アメリカが唯一敗北した「ベトナム反戦」は? 「イールズ闘争」は? 「白鳥事件」は? 「ハンガリー事件」って? 「総評・社会党」はなぜなくなったのか? 第9条はなぜ生存権の基本なのか? 安倍内閣の野望は?
ほとんどマスコミなどで伝えられていない、情報と諸事実も伝えたい。(編集子)

information新着情報

2015年05月 31日 (月)
アベノミクスは国民をどこにもっていくのか―市民にとっての経済
2014年02月 03日 (月)
竹中平蔵という男・近代経済学者
2012年11月18日 (日)
野田首相の思想と行動――松下政経塾とは―T
2012年11月21日 (水)
野田首相の思想と行動――松下政経塾とは―U
2012年11月21日 (水)
消費税のお金を巻き上げたいのはハイパーエリートの財務(大蔵)官僚




   
   2015年3月〜5月
   「ある編集者のブログ」より


2015年3月28日 (土)

「アベノミクス」は国民をどこにもっていくのか――野口悠紀雄さん、服部茂幸さん、伊東 光晴さん

 

 先日、NHKラジオを聴いていたら「アベノミクスとトリクルダウン」(大企業や富裕層を減税により優遇することで、富裕層らの経済活動が活性化され、最終的に貧困層を含む社会全体に富が行き渡るという理論)の話をしている経済評論家(TVのコメンテーターに出てくるあるシンクタウンの研究者)によって、これからは地方もその他の国民にもお金が回ってくるという「希望的観測」を主張していた。

 NHKは会長の発言がたびたび批判の的になるが、現場のプロデューサーまで、ちょっとおかしくなってはいないか、心配だ。

 

 WEB上には「アベノミクス」の批判として、誰でも読める文章――「日本売り」で、とめどない円安になることが危惧されます――と発言をしている野口悠紀雄さんのインタビューがある。全文が「★阿修羅♪ 」にあったのですぐ読める。そのあとに反論もある。


 そのリード記事は次の通り。

 「アベノミクスの成功を確かなものにすることが最大の課題」――。昨年末の衆院選後も、安倍首相は引き続き「デフレからの脱却」を最優先に掲げた。だが、アベノミクスによって輸入物価は急上昇し、中小企業の「円安倒産」が相次いでいる。多くの国民に「成功」の実感はない。安倍首相の力説する「この道しかない」の先にどんな事態が待ち受けているのか。日銀の異次元緩和を「金融政策の死」と切り捨てる野口悠紀雄・早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問は、「日本は没落するかもしれない」と警告した。

 

 日刊ゲンダイ:野口悠紀雄氏がアベノミクスを批判 「異次元緩和は脱法行為」(201529日)

http://www.asyura2.com/15/senkyo179/msg/599.html

  元の出所は:『日刊ゲンダイ』((201529日)。

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/157035


   

  ▼追記 毎日新聞でも論評(2015.04.03

 

  ▽危ういアベノミクス バブル経済とは何だった
   http://mainichi.jp/m/?XDqLOr

 

  アベノミクス:バブル崩壊25年 「結局、日本人はバブルから何も学んでいない」

 

   20150326日  ◇野口悠紀雄さんインタビュー

 

  ▽バブル崩壊25年「結局、日本人はバブルから何も学んでいない」
   http://mainichi.jp/m/?pXDmgI

 

 

 そこで「アベノミクスにかかわって」関連した本を読んでみた。


 最初の本は、『アベノミクスの終焉』(服部茂幸著、岩波新書 2014821日 )。

本書の宣伝文章は次の通り。編集者がその企画の思いを短い文章でまとめている。

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 政府と日銀によって紡がれる「アベノミクスによって日本経済は回復しつつある」という「物語」。しかし、それは真実なのか。異次元緩和の始まりから一年以上がたった今、いくつもの「つまずき」を抱えたアベノミクスの実態が明らかになっている。政治のレトリックに惑わされることなく、客観的なデータにもとづき、警鐘を鳴らす。

 

次に『アベノミクス批判――四本の矢を折る』(伊東 光晴著、岩波書店 、2014731日)を読んだ。


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 その中身の紹介は、以下の新聞インタビューが短く的確にまとめている。

日刊ゲンダイ:『アベノミクス批判――四本の矢を折る』(伊東 光晴著)――2014810 日)より。著作権を知らないわけではないが、これをUPしておく(新聞WEB記事はすぐになくなる可能性があるので)。

 

経済学者伊東光晴氏「聞きかじりだから安倍首相は嘘をつく」

 

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/152461

 

「アベノミクスはすべてを壊そうとしている」/(C)日刊ゲンダイ

 86歳の老学者はこう吠えた

 

「エコノミストは理論を知らない。経済学者は現場を知らない」

 

 かくて、世間はいまだにアベノミクスという幻想に浮かれるのである。京大名誉教授・伊東光春氏(86)の著書「アベノミクス批判 四本の矢を折る」(岩波書店)は、その幻想を徹底的にぶち壊し、現実をむき出しにするものだ。国民は目を覚まさなければならない。

――心筋梗塞で倒れられたのは2012年2月ですか? その後いかがですか?

 東京医科歯科大に担ぎ込まれたから助かったんです。東大なら1%、医科歯科なら2%の確率とかで、その1%の差にひっかかった。脳の破壊を低温療法で防ぎ、この年ですから2時間半しか持たない手術を、4時間半やりました。

――にもかかわらず、その後の言論活動は極めて精力的ですね。

 もう本は書けないと思ったんですよ。でも、あまりに経済学者が情けないんだ。だから、アベノミクスのごまかしを突けないんだよ。

――世間ではさまざまな専門家がアベノミクスを評価していますが。

 エコノミストは理論を知らない。経済学者は現実を知らない。そんなのが新聞社で御用を務めている。理論も現実も知っている日本人はいない。

――アベノミクスには異次元緩和という第1の矢、国土強靭化を大義にした財政出動という第2の矢、成長戦略という第3の矢があるわけですが、全部ダメ?

 これに戦後の政治体制の改変という第4の矢が隠されている。アベノミクスはすべてを壊そうとしています。

――まず、第1の矢ですが。

 本質的には日銀の国債引き受けです。それをやらないと、予算が組めない。これ以上国債を出すと、国債金利が上がってしまうからです。金利が1%上がれば、予算編成ができなくなる。財務省の役人のクビが飛んじゃう。そこで言うことを聞く人物を日銀総裁にしたのです。

――異次元緩和で投資や消費が増えるもくろみでしたが、うまくいっていませんね。

 根拠なき政策効果への期待です。日銀の岩田規久男副総裁は異次元緩和をすると、人々は物価が上がるだろうと考え、設備投資が増加し、景気浮揚の力が働くとしていますが、人々の期待は多様なのです。物価が上がれば、生活が困ると考え、生活を切り詰める人もいるかもしれない。金利が低くなったところで設備投資をするかというと、過去に経済企画庁の企業行動調査は否定的な調査結果を出しています。

――しかし、株価が上がったことで、人々は幻想に惑わされている。

 安倍首相は政権に就いた時に、「15年間の長期の不況からの脱却」と言ったでしょう。これにカチンときました。この前提からしてウソだからです。汚染水コントロール発言もそうでしたが、彼は平気でウソをつく。なぜだかわかりますか? すべてが聞きかじりだからですよ。学者の間では2002年からリーマン・ショックまでは好景気だったのは常識です。15年不況と言っていたのは岩田氏だけですよ。それに日本株が上がったのは政権交代やアベノミクスとは全く関係がないメカニズムが働いたからです。外国人投資家には分散投資に代表される投資原則があって、米国枠、EU枠が決まっている。米国株が上がり、その枠を超えれば、その分は第三国、つまり日本市場に流れてくる。分岐点は2012年6月で、日本株の上昇は野田政権が続いても起こりましたよ。

――著書では財政出動の第2の矢もできっこない空手形と書かれていますね。10年で200兆円、1年間で20兆円の国土強靭化政策ですが、国債の累積状況からみてもできる余地はないと。

 それなのに、人気取りで法人減税とか言い出すんだからね。税収の減少と支出の上昇の折れ線グラフを「ワニの口」と言いますが、財務省の役人も開いた口がふさがらないと言いたいでしょう。

 

原発売り込みは無責任の極み

 

――気になるのは、こうした場当たり政策を続けて、どうなるのか? 特に日銀引き受けですよね。いつまで続けるのか。異次元緩和に出口戦略はあるのか? この先どうなってしまうのか。

 出口戦略なんて、まったくありません。短期間はごまかしができても長期間はできません。バランスを崩し、大きなインフレーションを起こす。だから、大インフレを経験したドイツは決して、こういうことをやらないのです。

――成長戦略はどうですか? TPPも心配です。

 TPP交渉に参加している10カ国は、地域的にも拡散しており、産業特性、制度、伝統、発展の度合い、所得も異なっています。そんな中で、あらゆる規制をともにできますか。戦後、アメリカは世界経済体制のルールをつくる際、理想主義に燃えていました。それで発足したのが「GATT」ですが、あれは製造業のルールなんです。各国で自然条件の異なる農業、制度が異なるサービス分野は除外した。そこまで一律にしたら、世界は先進国は工業、後進国は農業だけになってしまうからです。そういう根本を押さえておかないといけません。

――安倍首相は原発をトルコに熱心に売り込んでいますね。

 無責任の極みですよ。原子力発電の最大の問題は廃棄物の処理ができないことです。福島の除染が行われていますが、汚染物を流して移動しているだけなんですよ。現在、放射性物質を除去する、分解する技術がない。どうにも処理ができないのです。それなのに安倍首相はトルコに原発を売り込む時、「廃棄物はモンゴル高原に埋める」と言ったそうですね。アメリカがIAEAを通じてそう言っていますから、その“口マネ”をしたのでしょうが、モンゴルの同意を得たわけではない。

――福島第1にも行かれたそうですね。

 電気事業審議会の委員を20年間やり、福島第1原発の現場の実態を歩いて調べたことがあります。原子力工学の専門家は原子炉の原理はわかっても現場のことはまったくわかりません。

――経済学者と同じ?

 電線が30キロメートル、パイプは10キロメートルもあるんですよ。原発を建設した日立、東芝、三菱の技術者以外はわかるはずがありません。資源エネルギー庁もそうです。安倍首相は「政府が責任を持って」と言いますが、できっこありません。

――そこにもってきて、「第4の矢」の危険性です。集団的自衛権の行使容認に踏み切り、戦後レジームの転換に乗り出している。

 私は日中国交回復に側面から関係したんです。その経緯をいささかでも知る者として、言っておきたいのは、尖閣列島の領有問題は「棚上げ以外にない」ということです。田中角栄、周恩来とともに、外務省の条約局長として日中国交正常化をやり、後に中国大使になった故中江要介さんがこう言っていました。「先人たちが日中双方で長い友好関係を持続してきた努力を無にしてはならない。政治のトップがナショナリズムに固執してそういうことをしてはならない」と。

――しかし、安倍政権はナショナリズムをあおり、抑止力の重大性を強調し、自衛隊の役割を拡大させ、それを積極的平和主義と言っていますよ。

 中国に侵略した時も日本は「東洋平和のため」と言ったのです。紛争の解決手段として武力を用いるという本質は変わらない。武力で紛争を解決できないのは、米国がイスラエル問題で手を焼いていることをはじめ、歴史の示すところなんです。イスラエルがある限り、アラブ諸国は米国と戦いますよ。そんな米国がやっている喧嘩に首を突っ込むのが集団的自衛権です。日本はアラブ諸国から憎まれていいんですか。日本は過去の戦争の反省から、「国際紛争解決の手段として武力を使わない」と憲法9条で定めた。その精神の先見性は普遍的で、いまこそそれが生かされるべきだと思います。

▽いとう・みつはる 1927年東京都生まれ。東京商科大(現一橋大)卒。京大名誉教授。旧経済企画庁の国民生活審議会委員などを長く務めた。「現代に生きるケインズ」「原子力発電の政治経済学」など著書多数。


2015年4月3日 (金)

「アベノミクス」は国民をどこにもっていくのか・その2――高橋伸彰さん

 

Twitterで(43日付け)、「残業代ゼロ法案」を働き過ぎ抑制と報じるマスコミ(特に日経!)は、労働者が残業代目当てに働いているとでも思っているのだろうか? 働かせ過ぎ抑制のために残業手当ての支給が義務づけられてきた歴史を一切省みずに、財界の言い分を受け入れ法を改悪する安倍政権を支持するのが公正な報道なのか?

318日付け)、安倍政権は労働者にとって倒す相手であり、協調する相手ではない。安倍政権が喜ぶような賃上げ回答で労組は幕を引くな。

 https://twitter.com/ecotakahashi

 

ご本人のTwitterの紹介文は、「日本経済論が専門です。上洛してから15年。もっとも私はへそ曲がりなので通説を信じる人には、戯言にしか聞こえないかもしれません。嫌いなのは権力、決して特定の政治家ではありません。最近読み直して感動した本は山本義隆『知性の叛乱』。社会には話し合いや討論だけでは解決できない問題がある。まずは声をあげよう。」と“過激”な発言をしている「高橋伸彰」さん。

数少なくなったマル経系の研究者かと思ったら元官僚さん。ケインズ派の人で、現在は立命館大学の教授。

 

 Twitter上で賃上げなどの労働問題を含めて現代日本社会を日常の視点から、的確に厳しく批判している。

 政府・経団連・連合・大マスコミのトライアングルを見抜いて、そのまやかしも喝破している。

 読むだけでもおすすめ。

 

その高橋さんが水野和夫さんとの対談本:『アベノミクスは何をもたらすか』(岩波書店、2013628日)を出しているので読んだ。

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今回もその本を紹介している、根井雅弘(京都大学大学院経済学研究科教授):『アベノミクスは何をもたらすか』(高橋伸彰 水野和夫 岩波書店、2013628日)のアドレスを書いておく。

http://booklog.kinokuniya.co.jp/nei/archives/2013/07/post_16.html

 

  

高橋さんの本には、『優しい経済学―ゼロ成長を豊かに生きる―』、高橋伸彰著・ちくま新書筑摩書房 、200304)もある。

「小泉構造改革」の時期に物申した本。 
 

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著者からのコメント:一つでも多くの「欲」を満たすために成長するより、一つでも「欲」を消すほうが幸せになれる

 成長によって得られた「豊かさ」がある一方で、成長のために失われた「豊かさ」もある。一円でも多くの所得を得るために、我々はこれまでどれほど大切な時間と、どれほど大切な友人を失ってきただろうか? 日本のGDPは「失われた10年」を経ても、なお世界のトップクラスだ。それでも、日々の生活や将来の老後に不安を抱く人が多くいるなら、それは成長力が不足しているからではなく、政策が貧困だからだ。どんなに平等に所得を分配しても一人当たり年間10万円にも満たない低所得国と同じ発想で、成長のためには改革が必要だと連呼しても人々は「豊か」にはなれない。経済学の原点は「より良い社会」を築くことにあり、一円でも多くの所得を稼ぐために人々を競争に駆り立てることではない。改めて、経済! 学の原点に立ち戻って、いまの日本経済を見つめなおして欲しい。そんな思いを本書に込めました。

 

「今行われている構造改革は経済的強者には「優しい」かもしれないが、経済的弱者には「冷酷」なものであって、成長が実現したとしても、その陰で日本社会における貧富の格差は一層拡大する」と、4割になろうとしている非正規労働者の増大による格差拡大を見通していた、といえる。

 ▽追加(2015.04.10

 

『朝日新聞』(20150409日付け)で以下のような記事が書かれていた。このような記事が掲載されることも珍しいのではないか。

 「株価2万円」に浮かれるマスコミ報道の中で、この署名記事を書いた記者さんと掲載したデスクさんは「エライ!」


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2015年4月 5日 (日)

「アベノミクス」は国民をどこにもっていくのか・その3――岡林信一さん

関西を中心に交流している名物メーリング=「市民社会フォーラム・〈出発のとき〉(civilsociety-forum)」(岡林信一さんが運営責任者、1971年生まれ)を読んでいる。

その中で、日本経済・グローバル経済の現状をめぐる論点・解決方向をめぐって議論がつづいている。

「アベノミクス」も含めて議論しているメーリングだ。

議論をダウンロードしてまとめて読んだら、A4100ページほどになった。

  MLホームページ:

 http://www.freeml.com/civilsociety-forum 

 

 

2015/02/21付けで「MLでの議論の中で、本の紹介をしていましたものを整理して、市民社会フォーラムのブログに掲載しました」と主催者の岡林さんの案内が以下のようにある。

すべてを読んでいないが、「アベノミクス」をとらえる異論・異見を知るうえで、大変参考になる。

 http://www.freeml.com/civilsociety-forum/6268

 

友寄英隆『アベノミクスと日本資本主義 差し迫る「日本経済」の壁』

http://civilesociety.jugem.jp/?eid=29110

 

碓井敏正・大西広編『成長国家から成熟社会へ―福祉国家論を越えて―』

http://civilesociety.jugem.jp/?eid=29112

 

松尾匡『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』

http://civilesociety.jugem.jp/?eid=29113

 

トマ・ピケティ『21世紀の資本』

http://civilesociety.jugem.jp/?eid=29111

 

 「しかしまあ、マルクス派の中ですら見解が著しく異なっているのに、実りある理論論争なんてほとんど見ないですね。
 それだけ左派の理論というものが相手にされなくなったってことでしょうかねえ。

だから、そんなに目新しくものないピケティなんかが「輸入学問」として着目されているんでしょうか?」と岡林さんは書いている。

 反論ある方も読んでみたらどうか。



  関東でこのような議論をしている「場」があるのだろうか。


2015年4月24日 (金)

「アベノミクス」は国民をどこにもっていくのか――その4・『金融緩和の罠』――藻谷浩介さん×萱野稔人さん

 ▼下記文章への追加(日本経済新聞、2015.05.20)

  14年度は5年ぶりマイナス成長 GDP前年比1.0%減 

 内閣府が20日発表した2014年度の実質国内総生産(GDP)は前年比1.0%減と、世界金融危機の余波が響いた09年度(2.0%減)以来5年ぶりのマイナスとなった。消費増税後の4〜6月期、7〜9月期と2期連続でマイナス成長だったことが響いた。年度後半からは持ち直しの動きも出たが、前半の大幅減を埋められなかった。

 

 ▽以下本文

ベストセラー・『デフレの正体』(角川書店(角川グループパブリッシング) (20106)で、「15-64歳の生産年齢人口が1996年を境に縮小しはじめ、好景気下でも内需縮小が避けられない」。「団塊の世代の労働市場から退出するのに合わせて、日本の企業は人件費の総額を減らすという方向で調整し、内需を縮小した」ことによって「デフレは加速した」としているが、ある選挙で、これを安倍首相が批判している演説がTVで流れていたことを記憶している。

安倍首相やリフレ派からの批判について、反批判している本があった。それが『金融緩和の罠』(集英社 2013年4月)だ。

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本書の宣伝文は次の通り。

 

 アベノミクスでにわかに注目をあびる金融緩和政策。
 しかし、「日銀が大量にマネーを供給すれば、景気が回復する」というのは机上の空論だ。 

 むしろ「失われた二○年」をもたらした本当の理由を覆い隠し、かりそめのバブルを引き起こすだけではないか。 

 しかも副作用の大きさは計り知れない。国債の信用喪失に始まる金融危機、制御困難なインフレなど、さまざまなリスクを第一線のエコノミスト・経済学者らが哲学者と徹底的に討論。 

金融緩和の落とし穴を見極め、真の日本経済再生への道筋を描き出す!

 
 本書の「第一章」がおもしろい。

 読んでいると、「貨幣供給量を増やせば経済が活性化する」と信じているリフレ派、昔のマルクス主義者が権力の奪取を目指し、中央銀行を操作してコントロールしていく政策と相似形だとしている。

 

また生産年齢人口(15歳から64歳)の減少によって、「小売販売額のピークは1996年の141兆円、10年後には13兆円のマイナス」で、「人口オーナス」(現役世代が減少し高齢者世代が増加する)に突入した社会が、小売販売額減(住宅や土地、自動車、家電など)の原因としている。

 

「本来なら団塊の世代の退職にともなって浮いた人件費を企業は、若い世代の雇用や給与増にまわすべきでした」と、この間の「賃上げナシ社会」の愚かさも衝いている。

 

高齢者多数社会で、「株が上がっても」消費に向かわない社会になっていることも語っている。



 「藻谷 個人投資家の多くは高齢富裕層なのです。彼らには、現役世代のようにモノを消費する理由も動機もないですからね。退職して給与所得がなくなった人であれば、なおのこと消費せずに「老後の不安に備える」とかいって貯蓄を増やす傾向が強まります。

リフレ論者たちは、日本人、とくに資産をもっている高齢者の貯蓄志向の強さを計算に入れていない。企業が人件費を削ってだした利益を配当するたびに、現役世代から彼ら高齢者に所得が移転します。年間五五兆円におよぶ年金も、現役世代から高齢者への資金還流です。」

「藻谷 ちなみに高齢富裕層は、この時期に増えた所得をいったいなににつかったのか。国債を買ったんでしょう。あるいは外貨預金。

――富裕層の所得が増えた部分が国債にまわされていることがまた問題のひとつの根ですね。そうなると、高齢富裕層、銀行、政府のなかでお金がぐるぐるまわっているだけということになる。」

 

 笑うに笑えない話が出ており、まだまだ面白い話があるので、以下に目次を掲げておく。

 

第一章 ミクロの現場を無視したリフレ政策

           藻谷浩介×萱野稔人

    

現実から乖離したリフレ政策/

働いてお金を稼ぐ世代が減りはじめた/

人口オーナスが値崩れを引き起こす/

人口オーナスを無視した結果の供給過剰/

平均値「物価」で見るから間違える/

人件費カットでよけいに需要が冷えこんだ/意味のない生産性向上/

付加価値の総額こそがGDP/株主資本主義を問い直す/

消費よりも貯蓄にむかう高齢者/

もはやインフレ期待は醸成しづらい/

高齢者にとっての円安/不動産価格も上がらない縮小社会/

止まらない国内経済縮小の流れ/人口構造とインフレ/

アメリカの後を追えばいいのか/

円安にすれば日本経済は救われるのか/

富裕層にのみおこったトリクルダウン/

消費への波及効果はほぼゼロだった/

政府、銀行、富裕層のトライアングル/

逃げ足の早いグローバル・マネー/インフレのコントロールは不可能/

人口オーナスをチャンスに変える

 

 

第一章 ミクロの現場を無視したリフレ政策

    藻谷浩介(もたにこうすけ)1964年生まれ。(株)日本総合研究所調査部主席研究員。主な著書に『デフレの正体』など

第二章 積極緩和の長期化がもたらす副作用 
        河野龍太郎(こうのりゅうたろう)1964年生まれ。BNPパリバ証券経済讃査本部長・チーフエコノミスト。

第三章 お金への欲望に金融緩和は勝てない

    小野寺廉(おのよしやす)1951年生まれ。大阪大学社会経済研究所教授。経済学博士。

 

▽インタビュー

    萱野稔人(かやのとしひと)1970年生まれ。津田塾大学国際関係学科准教授。博士(哲学)。


2015年5月21日 (木)

「アベノミクス」は国民をどこにもっていくのか――その5・里山資本主義の提案――藻谷浩介さん

 2008年9月のリ―マンショック後、アメリカ経済がダウンし、「日経平均株価も大暴落を起こし、9月12日(金)の終値は12214円だったが、10月28日には一時は6000円台まで下落」(ウィキペディア)したのはつい最近だ。

 『里山資本主義――日本経済は「安心の原理」で動く』(藻谷浩介他著、角川書店 、2013年7月)を書いたNHK広島のプロデュ―サ―の井上恭介さんは、その「マネ―資本主義」の取材から「経済100年の常識」破りから始まり、里山に行きついたとしている。

 同行者は、『デフレの正体』(発売日:2010年06月09日、角川書店)を書いた藻谷浩介さん。

 藻谷さんは『デフレの正体』で「現役世代人口の減少、日本の問題はここにある!」として、反アベノミクス系研究者として著名。

 WEB上で「日本紙幣をジャブジャブ刷り、国債を買い、株式市場に流し込む」野蛮な「リフレ派」の人たち(『アベノミクスとTPPが創る日本』、浜田 宏一著、講談社、2013年11月ほか)から攻撃されている。

 

150520satoyama


 『里山資本主義』の導入部は、「岡山県真庭市」、標高1000メ―トルの中国山地、人口は5万人。製材業を営む従業員200人ほどの企業が大転換をすすめていた、というレポ―トから始まっている。


 それは「木質バイオマス発電」「石油に代わる燃料・ペレット」「1960年代まではエネルギ―はみんな山から来ていた」ことを再認識した。

 つぎは「21世紀の新経済アイテム・エコスト―ブ」の紹介し、「過疎を逆手に取る」農業・人のつながりの発見者がいると紹介。

 

 P1010054


 続きは本書で。

 藻谷さんは、「不安・不満・不信に決別を、日本の本当の危機・少子化への解決策」を展開して、市民への安心づくりを呼び掛けている。

 最終総括
 
 「里山資本主義」で不安・不満・不信に訣別を 日本の本当の危機・少子化への解決策

 繁栄するほど「日本経済衰退」への不安が心の奥底に溜まる/マッチョな解決に走れば副作用が出る/「日本経済衰退説」への冷静な疑念/そう簡単には日本の経済的繁栄は終わらない/ゼロ成長と衰退との混同―「日本経済ダメダメ論」の誤り@/絶対数を見ていない「国際競争力低下」論者――「日本経済ダメダメ論」の誤りA/「近経のマル経化」を象徴する「デフレ脱却」論――「日本経済ダメダメ論」の誤りB/真の構造改革は「賃上げできるビジネスモデルを確立する」こと/不安・不満・不信を乗り越え未来を生む「里山資本主義」/天災は「マネ―資本主義」を機能停止させる/インフレになれば政府はさらなる借金の雪だるま状態となる/「マネ―資本主義」が生んだ「剃那的行動」蔓延の病理/里山資本主義は保険。安心を買う別原理である/剃那的な繁栄の希求と心の奥底の不安が生んだ著しい少子化/「里山資本主義こそ、少子化を食い止める解決策」「社会が高齢化するから日本は衰える」は誤っている/里山資本主義は「健康寿命」を延ばし、明るい高齢化社会を生み出す/里山資本主義は「金銭換算できない価値」を生み、明るい高齢化社会を生み出す




   
   2014年2月 3日 (月)
   「ある編集者のブログ」より


 テレビのニュースで、安倍首相の発言する場面。そのそばに竹中平蔵(1951年生まれ)がいた。国家戦略特別区域をつくるために提案した場面だ。

 私が参加しているメーリングで国家戦略特別区域について「その主要なターゲットは東京都を“世界で一番ビジネスのしやすい”地域にする、つまり都民の暮らしや雇用を守るのではなく、グローバル多国籍企業がより活動しやすくなるように、東京や日本の各地域を変えて行こうとするものである」と警告を発している。

  “国家戦略特別区域とは、第2次安倍内閣が成長戦略の柱の一つと掲げる経済特区及びその構想。外国企業の誘致のため、「解雇ルール」、「労働時間法制」、「有期雇用制度」の3点を見直し対象とする特区を設けるというもの。

 その中心人物が竹中平蔵だ。彼は、小泉構造改革政策のブレーンで、国民に格差社会をもたらした人物で、青年層・女性たちの非正規労働者化を推進し、地方経済・自治体財政を衰退化させたアメリカ仕込みの「近代経済学者」(いまは新自由主義経済が主流だが)だ。

 そこでインターネット検索でヒットした『市場と権力――「権力」に憑かれた経済学者の肖像』(佐々木 実 、講談社 、2013年5月9日)を読んでみた。たいへんおもしろかった。

  


 下記は、出版社側が書いた宣伝文だ。

 経済学者、国会議員、企業経営者の顔を使い分け、“外圧”を利用して郵政民営化など「改革」路線を推し進めた竹中平蔵がつぎに狙うものは!?

 8年におよぶ丹念な取材があぶり出す渾身の社会派ノンフィクション。
 第12回新潮ドキュメント賞受賞作品――「構造改革」「規制改革」という錦の御旗のもと、いったい何が繰り広げられてきたのか? その中心にはいつも、竹中平蔵というひとりの「経済学者」の存在があった。
 “外圧”を使ってこの国を歪めるのは誰か? 郵政民営化など構造改革路線を推し進めた政治家・官僚・学者たちは、日本をどのような国に変えてしまったのか?
 8年におよぶ丹念な取材からあぶり出された事実から描ききった、渾身のノンフィクション。

 本書に書かれていることだが――、彼はインテレクチュアル・アントレプレナーシップだそうだ。

 世の中を動かしていくのは、アントレプレナーシップ(起業家精神)です。そして私たちにいま求められているのは、インテレクチュアル・アントレプレナーシップ、すなわち知的起業家精神です。それにはいろいろな局面がある。

 たとえば、東ヨーロッパが社会主義から解放されたときに何が起こったか。アメリカの国際経営コンサルタントと言われる人たちが大量に押しかけて、アメリカ的なビジネスをつくった。これはひとつの知的起業家精神ですよ。ソ連がロシアになったときにも、たとえばワシントンのアーバンインスティチュートという研究所がロシアに進出し、ロシアの都市計画をほとんど手がけた。あるいは、中国で会計基準をつくるときには、アメリカの国際公認会計士が大挙して手伝った。

 そして、いまの日本では、政策に関する知的起業家精神が改めて求められている。

 自ら解説しているように、小泉政権における竹中のポジションは、東欧の旧社会主義国にビジネスチャンスを求めて押しかけたアメリカの経営コンサルタントとどこか似ていた。抜け目ない知的起業家は「市場化」の伝道師でもある。

『市場と権力』の紹介文が、現代ビジネスにある。まずそれを読んでほしいが、アメリカ取材など丹念に行われた本だが、まだ読んでわからなかったことがいっぱいある。

 1 彼はなぜ、慶応大学教授でありながら半年もアメリカの生活ができたのか。

 2 他の研究者と共同研究した論文が、彼の名前で単行本となっている事実。なぜ問題にならないのか。

 3 リーマンショックで大打撃を受けた世界経済、金融マジック経済の仕掛けをした人物ネットワークと懇意になっていたのに、なぜ彼は批判をまぬがれたのか。

 4 なぜ佃島に3カ所の「億ション」を持てたのか。国会でも追及されたようだが、その後は。

 5 小泉「郵政改革」の仕掛けを何のためにやったのか。

 6 金融改革で問題を起こした人がいるが、なぜ彼は塀の上からなかに落ちなかったのか。

 7 いままた安倍内閣の司令塔に座っているのは、マスコミが悪いのか、アメリカが悪いのか、国民が無知なのか。






野田首相の思想と行動――松下政経塾とは―T新着情報

    2012年11月18日 (日)
   「ある編集者のブログ」より


 以前、有田芳生さん(民主党参議院議員)のブログ(有田芳生の『酔醒漫録』、2010/01/30)で民主党の構造は、3層あるという分析・渡辺治教授の最終講義――(《「悩みながらの構造改革派」(指導部)、「民主党による利益誘導型政治」(小沢グループ)、「個々の福祉政治実現型」(長妻、山井など)と腑分けする。渡辺さんの表現では「頭部」「胴体」「手足」である。私がこれまでも主張し、これからも取っていくスタンスは「福祉政治実現型」だ》を読んだことがあるが、「松下政経塾」出身者は、「悩みながらの構造改革派」なのか、よく分からなかった。

  http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2010/01/post_d9f7.html



 菅直人が首相になったときは、図書館から『政治家の人間力――江田三郎への手紙』(責任編集・北岡 和義、明石書店、2007年10月12日)を借りてきて一読したが、「1960年代の構造改革派」のようには決してならなかった。
  http://www.eda-jp.com/saburou/30-100/index.html


 さて「松下政経塾」というのはなんのか? 知りたくて、この間、ジャーナリスト・出井康博さんが書いた2冊の本『松下政経塾とはなにか』(新潮新書、2004年11月)、『襤褸の旗――松下政経塾の研究』(飛鳥新社、2012年2月)を読んでみた。

 前者は松下幸之助を中心に書かれており、巨額な資金が出され、政治家養成を試みた話が中心だった。記憶に残ったのは、「無税国家論」だ。

 後者の本では、野田首相の「志士の会」のときのアピール文(『日本プライド構想――コンセンサスの政治より、信念の政治を』、1997年)が掲載されていたので、ここに引用しておく。原典をインターネット上で検索したが、今の段階では調べきれていない。

 なんと、司馬遼太郎文学を下敷きにした「安サラリーマンの処世術」の文章ではないか。



 〈日本が危ない

 この国の危機を、我々はもはや見過ごすことができない。新しい時代の扉を開き、新しい日本を築くため、若い力が立ち上がる時が来た。

 長引く景気低迷は解決の緒すら見えず、国民の不安は日に高まるばかりである。国家財政は破綻の一途をたどり、このまま放置すれば、そのツケは次世代が背負うことになる。政・官・業の癒着は目に余り、続発する不祥事は、わが国指導者たちの質的劣化の現れである。未来の日本を担うべき子どもたちは刹那の海でおぼれ、健全な精神を失おうとしている。

 事態は深刻である。しかるに、国を導くべき指導者たちは時代認識に暗く、国の将来を見定めたビジョンをもたない。政党は相変わらず政権をめぐる醜い争いに明け暮れ、政治家は議席を守ることに汲々とし、官僚は保身のために前例主義と省益とでしか物事が決められない。

 もはや座視している時ではない。誰かが先陣をきって立ち上がるべき時である。このまま時を空費していれば、この国はたちまち深い奈落へ落ちてしまうだろう。「持ち時間」は僅かしかない。時代はまさに二十一世紀の大晦日である。溜まったほこりを払い、こびりついた汚れを拭う「世紀の大掃除」は、国力がまだ残っている今こそ取り組まなければならない。

 我々がめざす理想の社会は、他人の自由を侵さない限り個人の自由が保証され、またすべての人に機会の平等が約束された『自由社会』である。それは個人が自己責任のもとに、自身の人生を自由に選択できる、『夢と志の生きる社会』である。国会の役割は最小限にとどめ、個人の活動や生活に介入してはならない。

 しかし現在の日本は、網の目のように広がる規制や厚く堆積した既得権益が、国民の自由な経済活動や社会活動を阻害していて、理想とは逆の閉鎖社会に陥っている。こうした状況を打開し、理想を実現するためには、国のしくみを根本から変えるような大胆な改革が必要である。

 国家財政に寄生する業界を排除し、グローバル・スタンダードに基づいた、透明で公平な経済システムを構築し、活力に満ちた新規企業が次々と育つような土壌にしなければならない。次代に借金を残さないため徹底的な行財政改革を行い、効率的な国家経営を可能にする体質に改めなければならない。霞ヶ関が自由な経済活動を過度に統制したり、地域に根ざしたまちづくりにまで深く介入するような集権体制を破砕し、自由と機会に満ちた経済社会、分権型社会を創らなければならない。

 また、人々が最期まで安心して暮らせる、自主自立を前提とする豊かな福祉社会を築かなければならない。自然と環境を守り、地球を美しい姿のままで後世に残さなければならない。戦後教育の至みを根本から見直し、子どもたちの心の中にナイフが巣食うような社会と決別しなくてはならない。

 時代の端境期に生きる我々は今、歴史的決断を迫られている。もはや弥縫策の積み重ねでは、次代に輝かしい未来を招来することはできない。日本のしくみを根底から変える、まさに革命ともいうべき劇的変化を成し遂げるしかない。それが担えるのは、特定の利益にとらわれない、利他の精神に溢れた政治集団だけである。自己を犠牲にしても他人や社会のために尽くすという強い意志こそが、時代が求める改革者の要件である。

 すべての国民に考えてほしい。「特定の集団や特定の地域の利益代表が、数多く国会に送り込まれるのはなぜか」と。それは国家から自立した多くの人々よりも、国家に甘えすがる一部の人々の声の方が大きいからだ。国民の諦めと無関心とが、国民不在の古い政治体質の延命に手を貸していることに気付いてほしい。この国のかたちや自分たちの未来を決めるのは、国民の自覚ある行動と賢明な選択でなければならない。国民が主体である。真の民主主義国家を共に築こう。互いの自由を尊重しあい、主権者としての責任を自覚する真の主権在民国家を共に創ろう。

 徳川幕府の末期は、政治、経済、社会など、すべての面に至みが生じていた。それらを一掃し、新しい国家建設をめざして一群の若者たちが立ち上がった。その先頭に立った坂本龍馬が姉に送った手紙に、「日本を洗濯致し申し候」という言葉がある。明治維新とはまさに、命を懸けて国を救おうとした若者たちの純粋な利他の精神が、日本という国の丸洗いを可能にした大事業だったのである。翻って現在の日本も、幕末同様、国の様々なシステムが機能不全に陥り、構造改革の必要に迫られている。再び国を丸洗いすべき時が来たのだ。

「いま一度日本を洗濯致し申し候」これが私たちの志である。

 ここに、名もなく地位もないが、ただひたすらに日本再生のため、「二十一世紀維新」に身命をささげようという改革者の結集体として、「志士の会」を結成する。

 志を同じくする人々は老若男女こぞって結集してほしい。日本をよくするために、力ある人は力を、知恵ある人は知恵を、資力ある人は資力を、是非、私たちに貸してほしい。

 若い力の疾風と心ある国民の怒涛とが重なった時、必ずや新たな歴史が開くと確信している。



 出井さんは次のように一言語っている。

 《以上が、当時四十歳だった野田が執筆した文章だ。

 「志士の会」という名称が象徴するように、野田らは明治維新に強い憧れを持っていた。趣意書には、坂本龍馬の有名な言葉も引用されている。つまり、自分たちこそ現代の「龍馬」だというわけである。このメンタリティこそ、野田に限らず、「松下政経塾」の真骨山なのだ。

 力の人った文章だが、かなり自己陶酔的でもある。幼いといえば、幼い。ひとことで言えば、空疎なのだ。》



 これでは、あの60年代末の東大闘争をくぐりり抜け、自民党政治を動かした「ハイパワーエリート官僚勢力」とその末裔に勝てるわけがない。

 消費税もオスプレイ配備もTPPもエリート官僚の指図で、動かされるはずだ。

 次の総選挙が始まっているが、石原慎太郎閣下や橋下次期首相候補にしても、「30年前の司馬遼太郎文学」を超えたキーワードで語ってほしい。

 「関が原」「義経」「坂本龍馬」「翔ぶが如く」をしこたま読んで、酒場でおだ上げて、1970年代から1980年代に語っていた人たちはすでに「鬼籍」に入っている人が多い時代なのだから!



野田首相の思想と行動――松下政経塾とは―U新着情報

    2012年11月18日 (日)
   「ある編集者のブログ」より


坂本龍馬の「船中八策」をまねて、最近出された大阪維新の会・「「維新八策」最終案の全文」(日本経済新聞WEB版、2012.09.01)を読んでみた。

 衆議院議員数を半数にする、憲法を改正しやすくする、ことなどをうたっている。

http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXNASHC3103B_R30C12A8000000

 下に掲げる「志士の会の『日本プライド構想』には、以下のような十一の政策」(『襤褸の旗――松下政経塾の旗』出井康博著、飛鳥新社、2012年2月)があるが、橋本維新の会の思想とほとんど変わらないことがわかる。

  


 第一策 首相公選制 日本のトップマネージャーは、国民の手で選ぶ

 第二策 地域主権  地域主権国家をつくり、地方をイキイキさせる

 第三策 安全保障  自国の安全に責任をもち、国際平和を支える国に

 第四策 情報公開  「知る権利」に立脚した情報公開の徹底を

 第五策 司法改革  時間とお金のかかる裁判をなくす

 第六策 税制改革  国民に富を残し、意欲の湧く税制に

 第七策 規制撤廃  経済規制を撤廃し、日本経済に活力を

 第八策 民営化   民営化を徹底的に進め、国の贅肉をとりのぞく

 第九策 社会保障  自助努力を「主」とする、社会保障制度を

 第十策 教育改革  百花繚乱の教育化企画で、独創的な子どもを育てる

 第十一策 環境保全 環境に責任をもち、人類の未来に貢献する



 著者のジャーナリストの出井さんは、《「第一策」の「首相公選制」以外は、総花的でわかりにくい。志士の会が目指す方向を理解するためには、政策の前に書かれた「はじめに」という以下の文章の方が明快だ。》として、下記の文章を引用している。


 〈現在の日本は自由主義という仮面をかぶった「社会主義国」といっても過言ではありません。戦後の日本に築き上げられた官僚主導中央集権型システムは、官民を一体化し、敗戦で壊滅的な打撃を受けた日本を、戦後三十年もたたないうちに世界の経済大国にまで成長させました。この事実は賞賛に値するものであり、私たちは先達の努力に心から感謝します。しかし同時に、日本に成功をもたらしたそのシステムこそが、日本を「社会主義国」化し、戦後最大の危機に陥れていることも認識すべきだと訴えます。

 (中略)私たちがいま取り組もうとしているのは、日本を仮面をかぶった「社会主義国家」から素顔の「自由主義国家」に改造することであり、日本そして日本人にプライドを取り戻すことです。それはまさに「二十一世紀の維新」とも言える大事業となるでしょう。私たちは、その大事業のブループリントを「日本プライド構想」としてここに提言したいと思います。恐らく多くの人は、私たちのこの提言に反発されることと思います。政治家がこれを唱えたならば、敵を増やし、落選することもあるでしょう。

 それでも私たちは提言します。それが日本を救う道だと信じているからです。そして、いま反発をもつ人にも、いずれは、賛同いただけると信じているからです。〉(同書、p96)



 昔、「日本は私たちの目標とする社会主義国だ」と書いた中国の研究機関があったことを記憶している。中国の権力集団が目標とするのが日本で、日本の権力をめざした人たちが「離脱」をかかげる、不思議な関係だ。


 話を戻して、大阪維新の会の目標と、野田首相の思想が一致しているのは、志士の会のメンバーが橋下次期首相候補のブレーンとして参加しているからだ。

 そのメンバー表は、下記の通り。

 《中心メンバーは、日本新党初当選組の野田佳彦、山田宏、長浜博行である。(中略)他のメンバーは、鈴木康友(一期、浜松市長)、海老根靖典(二期、藤沢市長)、河井淳一(二期、首相政務秘書官)、小田全宏(四期、NPO法人「日本政策フロンティア」理事長)、勝又恒一郎(八期、民主党衆院議員)、市村浩一郎(九期、民主党衆院議員)、中田宏(十期、前・横浜市長)など。さらに塾以外から、日本新党当選組の河村たかし(現・名古屋市長〉や中村時広(現・愛媛県知事)なども加わって、総勢十数名で構成された。》

 1997年ごろのメンバーだが、そのなかの山田宏、中田宏の両メンバーは、最近、日本創新党を解散し、日本維新の会から衆議院に立候補すると報道されている。

 野田首相が「民主党のマニフェスト」にはなかった消費税増税やTPPを推進しているのは、「エリート官僚政治からの離脱」をかかげた民主党を内部から食いちぎり(官僚主導中央集中型システムの離脱を言葉で言いながら)、「志士の会」が掲げた政治戦略を広げているからだ。

 このような「くらしやふくし充実の側」にたつ政治から自己中心の政治を実行する姿は、労働組合を内部から食いちぎり、企業の経営権を乗っ取ったインフォーマル組織の手法と同じだと思う。

 反権威主義でもういちど、企業と労働組合、自治体・政党の姿を見直したいものだ。




    2012年11月21日 (水)
   「ある編集者のブログ」より

 昨日は、「さようなら原発1000万人署名市民の会」に顔を出し、昔の代々木公園出発のメーデーを思い出した。

 今日は、一番書きたいことを書くことにする。それは、「1000兆円」の借金は、国民が使ったのであろうか。

 歴代の自民党政権とエリート官僚の分配で、使ってきたのではないか。ややもすると「日本型社会主義国家集団」のみなさん(原子力村+開発・建設大企業・地方の自民党集団+地方自治体官僚、そして沖縄などのアメリカ対策他。そして金融などに巣食う集団。プラスでいえば「日本型福祉国家」の支え)が、この「失われた20年」の中で、自らのポジションを守り、老後の生活を考えたために失われた金額ではないか。



 1月20日に消費税増税を柱とする「税と社会保障の一体改革」の必要性を国民に訴える「全国行脚」をスタートさせた、という毎日新聞の記事を下記に掲げておく。

 なぜか。安住財務相の横にいるのが、現代の“ハイパーエリート”の勝栄二郎事務次官だ。

 あなたが指図しているのではないか。




 週刊現代系の『現代ビジネス』の話も信じざるを得ない。

 「野田政権は、財務省に完全に支配されている。真の総理は野田佳彦ではなく、その背後にいる勝栄二郎事務次官である」
   http://gendai.ismedia.jp/articles/-/21453


 とにかく、官僚エリート集団にこびる「松下政経塾」出身の総理とその人たちは何を考えているのか、マスコミはなにも伝えていない。








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2013年03月15日
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